毎日、仕事と後輩の指導、上司への報連相に追われている。
気づけば勤め始めて15年。
そろそろ「中堅」という言葉からも、少しずつ外れつつある。
世間で言えば、しっかりアラフォーだ。
後輩を指導する機会も増えた。
それでも、厳しいけれど仕事のできる上司の存在には、今もかなり助けられている。
自分が何でもできるようになったわけではない。
むしろ、このくらいの立場になってくると、
誰もやりたがらない仕事と目が合うことが増えてくる。
その日も、そんな仕事が一つ残っていた。
⸻
QUEST:誰も対応したがらない顧客
要求が多い。
話が長い。
少し威圧的。
何度か対応したことのある人たちは、その人が来た瞬間に、なんとなく距離を取っている。
誰が対応するのか。
微妙な空気が流れる。
そんな時に限って、上司と目が合う。
「……やります。」
口に出した瞬間、少しだけ後悔した。
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予想通りだった。
「あれはどうなっている」
「これはどうしてできない」
「前はこうだった」
一つ答える。
また一つ出てくる。
説明しても、次の要求が出てくる。
少し威圧的な口調も変わらない。
時計を見る。
時間だけが進んでいく。
まだ自分の仕事も残っている。
他の顧客への対応もある。
上司が時間を気にするのも分かる。
でも、このまま一つ一つの要求に答えていても終わらない。
途中から、少し考え方を変えてみた。
この人の要求に全部答えることが、仕事なのだろうか。
それよりも、
この人は、なぜそれを求めているんだろう。
そこを探した方がいいんじゃないか。
⸻
「それって、○○ということでしょうか?」
「もしそういうことなら、これはできそうなんですけど、どうです?」
要求に対して、
「できます」
「できません」
だけで返すのをやめた。
代わりに質問を返してみる。
何に困っているのか。
何が嫌なのか。
どうなれば納得できそうなのか。
一つずつ聞いてみる。
最初は一方的だった会話が、少しずつ変わっていった。
「それなら、こういうのは?」
「なるほど。それならこっちはできるかもしれません。」
会話のキャッチボールが始まった。
全部の要求に応えたわけではない。
むしろ、できないことの方が多い。
それでも、
「できません」
で終わらせず、
何を求めているのかを一緒に探す。
少なくとも、その姿勢だけは伝わったようだった。
⸻
しばらく話したあと、その人が笑った。
「ありがとう。また連絡する。」
そして少し間を置いて、
「あなたの名前は?」
名刺を渡した。
向こうからも名刺を受け取る。
最初の雰囲気から考えると、ずいぶん変わった。
たぶん、この人が何を求めていたのか。
少しだけ分かった気がした。
全部解決したわけじゃない。
次に会えば、また何か言われるかもしれない。
でも少なくとも、
次は今日より少し話しやすい。
そんな関係は作れた気がする。
少しほっとしながらまばらなデスクに戻った。
時計を見る。
18時30分を過ぎている。
席に着いた瞬間、上司から声が飛んできた。
「今まで何やってたの?」
……。
確かに。
顧客との関係は、少し前に進んだ。
でも、その分ほかの仕事は進んでいない。
上司の言っていることも分かる。
今日の対応が正解だったのか。
今でも、よく分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
時間はかかった。
小言を言われた。
小さな一歩だったかもしれない。
それでも、得られた物は大きい。
LEVEL UP
《要求の奥を見る Lv.1》を獲得した。
相手の要求をすべて叶えることはできない。
それでも、
「なぜ、それを求めているのか」
を考えることはできる。
要求そのものではなく、その奥を見る。
アラフォー会社員は今日も板挟み。
仕事で出会った人と問題から、今日も一つスキルを持ち帰る。

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